増える認知症高齢者の事故、神奈川県大和市が保険加入

警察庁によると、昨年(2016年)1年間で、認知症または認知症の疑いが原因で行方不明になり、警察に届け出があった人は、1万5千人以上に上るそうです。2013年にはじめて1万人を超え、わずか3年の間に1.5倍に増えました。
ほとんどの方は、その日のうちに見つかっていますが、なかには発見までに1週間以上がかかっているケースもあります。そして、発見までにかかる時間が長いほど、死亡率が高くなるという研究結果もあります。

認知症の高齢者の徘徊といえば、記憶に新しいのが、愛知県での鉄道事故の裁判のことです。
認知症の男性が列車にはねられて死亡し、JR東海が家族に720万円もの損害賠償を求めたという裁判でした。
一審、二審は家族に支払いを命じる判決が出たものの、最高裁で棄却。「家族だからといって監督義務があるわけではない」という判断が下されましたが、こうした裁判が行われたこと自体、認知症の人を介護する家族、あるいは介護施設の人たちにとっては「家(施設)から出られないようにしたほうがいいの?」などと、不安に思ったはずです。

徘徊事故での高額請求に対応するため、市が公費で保険料を

こうしたことを受けて、神奈川県大和市は、認知症の高齢者が徘徊中に事故に遭い、家族が高額な損害賠償を求められるケースなどに対応するため、賠償金として最大で3億円が支払われる保険に加入することを発表しました。民間の保険会社と契約し、保険料は公費で支払うそうです。

対象となるのは、市が運営している「はいかい高齢者等SOSネットワーク」に登録している高齢者です。これは、徘徊の心配のある高齢者の個人情報を登録し、大和市、地域包括支援センター、在宅介護支援センター、大和警察署などと情報を共有して、登録者が行方不明になったときに早期発見できるようにしようというもの。
この「はいかい高齢者等SOSネットワーク」に登録している高齢者を被保険者として、保険の契約を行うそうです。
報道によると、自転車にぶつかって相手にケガを負わせた、物を壊してしまったといった場合の損害賠償にも対応し、また、高齢者自身がケガをしたり亡くなってしまった場合の保険金も支払われる予定だそうです。

「2025年には認知症を患う人が700万人を超える」とも言われているなか、いくつになっても住み慣れた地域で暮らすには、認知症になっても安心して暮らせる環境が欠かせません。

認知症の問題は誰にとっても、関係のあること。いずれは自分が、あるいは自分の大事な人が認知症を患うかもしれません。大和市のような取り組みが全国に広がれば、今よりもっと暮らしやすい世の中になるはずです。

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