介護ロボットのヒヤリハット事例を共有

人手不足が指摘される介護分野において、介護ロボットを導入する施設が増えています。

介護ロボットの導入目的としてあげられるのは、職員の負担軽減や業務の効率化、

サービス・ケアの質向上ですが、介護ロボットという新しいツールを導入するには

安全性の担保が欠かせません。

そこで、三菱総合研究所は、介護ロボット利用上の安全性を確保するためのアンケート調査、

ヒアリング調査を行い、その報告書とともに「介護ロボットを安全に使うためのポイント集」を

作成し、このほど公表しました。その内容をご紹介します。

 

6分野13項目の介護ロボットが調査対象

 

この調査研究で対象とされた介護ロボットは、次の6分野の13項目です。

 

  • 「移乗介助」……移乗介助(装着型)、移乗介助(非装着型)
  • 「移動支援」……移動支援(屋外移動)、移動支援(屋内移動)、移動支援(装着移動)
  • 「排泄支援」……排泄支援、排泄支援(排泄予測)、排泄支援(動作支援)
  • 「見守り・コミュニケーション」……介護施設見守り、在宅介護見守り、コミュニケーション
  • 「入浴支援」……入浴支援
  • 「介護業務支援」……介護業務支援

 

これらの介護ロボットを導入している施設・事業所約1,500カ所と介護ロボットを製造・販売している事業者にアンケート調査を行い、さらに、ヒヤリハットの事例検討を行っている6施設に対してヒアリング調査を行った結果をふまえて作成されたのが、「介護ロボットを安全に使うためのポイント集」です。

 

1年以内にヒヤリハット事例「あり」が1割強

 

三菱総合研究所が公表したアンケート調査の報告書によると、過去1年以内に、介護ロボット利用による事故(利用者の受診が必要になった事例)があった施設は、アンケートに回答した639施設中29施設(4.5%)で、9割弱(88.1%)は「なし」との回答でした(無回答が7.4%)。

 

利用者の受診には至らなかったものの過去1年以内に介護ロボットの利用によるヒヤリハット事例が「あった」と回答した施設は、89施設(13.9%)ありました。

 

見守りロボットの事故・ヒヤリハット事例

 

具体的にどのような事故・ヒヤリハット事例が起こっているのでしょうか。次のような事例が紹介されています。

 

  • 「見守り」ロボット関連

・機器の電源が切れていて、入居者の行動を把握できなかった

⇒危機の通知のみを確認しており、機器自体が動作しているのかという確認行為が手順に組み込まれていなかった

 

・別の利用者対応をするため部屋を離れたあと、ベッド横に倒れている状態で見つかった

⇒利用者が落ち着いて座っていた際に、センサーを切ってしまった

 

・見守り機器の通知で訪室したが、すでにバランスを崩して転倒していた

⇒ベッドから起き上がって離床するまでの時間が短い利用者は、センサーの通知タイミングや居室の配置を変えるなどの改善策を検討

 

・ベッド昇降操作時に製品のコードが引っ張られ、コードが断線した

⇒見守り機器配置後やベッドの移動時にはコードの長さに問題がないか、ベッドを最高・最低まで昇降させて確認を。

 

介護業務支援・コミュニケーションロボットのヒヤリハット事例

 

  • 「介護業務支援」関連

・タブレット端末等を共用する際、事前の消毒を行っていなかったため感染症リスクが高まった

⇒機器を共用する際には「消毒する、手袋をつけかえる」などの手順を定めましょう。

 

  • 「コミュニケーション」ロボット関連

・職員が目を離したすきに、利用者がロボットを持ち運び所在がわからなくなった

・利用者がロボットを動かし、足元に落としてしまった

⇒コミュニケーションロボットの利用者選定を適切に。

物を隠す、持っていってしまう、むやみにいじってしまうような利用者への使用はやめましょう。

 

 

介護ロボットを安全に利用するためのポイント

 

介護ロボットを安全に利用するための体制として推奨されたのは、次の4点です。

 

(1)「介護ロボット担当者」を設置する

(2)導入時、定常時、ヒヤリハット発生時に次のような取り組みを

「導入時」

・想定される事故への事前対策を検討する

・手順書などに介護ロボットを安全に活用するための手順などを記載する

・介護ロボットを使用するにあたって、マニュアルを見直す

「定常時」

・介護ロボットについてわからないことはすぐにメーカーに確認する

・正しい使い方についてメーカーから情報を得る

・施設内での介護ロボットの安全活用に関する情報を周知する

・介護ロボットについてわからないことを施設内で相談できる体制をつくる

・機器メーカーからの教育など、施設内で周知し理解を確認する

「ヒヤリハット発生時」

・介護ロボットに関するヒヤリハット等発生時に今後の対応を検討する

 

(3)介護ロボット・ICT機器等を安全に活用するための委員会を設置する

新たに委員会を設置するケースと、既存の委員会を活用するケースがある

 

(4)事故・ヒヤリハット発生時の施設内外の連絡・報告体制を整える

 

 

 

◎参照

・三菱総合研究所「介護ロボットの安全利用に関する調査研究事業報告書」

https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_126_2_report.pdf

 

・三菱総合研究所「介護ロボットを安全に使うためのポイント集~600施設の声~」

https://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_126_3_point.pdf

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