「骨太の方針2024年」、医療分野のトピックは?

6月21日に2024年の「経済財政運営と改革の基本方針」が閣議決定されました。いわゆる「骨太の方針」で、今後の予算編成や法整備の土台となるものです。医療関連ではどんな項目が盛り込まれているのか、見ていきましょう。

「骨太の方針2024年」がめざすものは?

今回の骨太の方針は、下記の4章で構成されています。

第1章 成長型の新たな経済ステージへの移行
第2章 社会課題への対応を通じた持続的な経済成長の実現
~賃上げの定着と戦略的な投資による所得と生産性の向上~
第3章 中長期的に持続可能な経済社会の実現
~「経済・財政新生計画」~
第4章 当面の経済財政運営と令和7年度予算編成に向けた考え方
1章では、どういう経済財政運営をめざすのかという考え方が示されています。
「現在、デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンスを迎えている」と、デフレから完全脱却して成長型の新たな経済ステージへ移行することが短期の課題として明記されています。

一方、中長期的には、「人口減少が本格化する2030年度まで」が「経済構造への変革を起こすラストチャンス」と強調し、少子高齢化・人口減少の克服と、豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会をつくっていくことが目標に掲げられました。

医療・福祉分野の賃上げも明記

骨太の方針の第2章でまず掲げられたのが、いかに「物価上昇を上回る賃上げを定着させる」かです。
その冒頭、「賃上げ支援を強力に推進するとともに、医療・福祉分野等における賃上げを着実に実施する」と、医療・福祉分野での賃上げについても明記されました。
また、次のような一文もあり、ベースアップ評価料等は次回改定でも引き続き残ることがうかがえます。

「医療・介護・障害福祉サービスについては、2024年度診療報酬改定で導入されたベースアップ
評価料等の仕組みを活用した賃上げを実現するため、賃上げの状況等について実態を把握しつつ、
賃上げに向けた要請を継続するなど、持続的な賃上げに向けた取組を進める」

さらに、賃上げについては、第4章の「当面の経済財政運営と令和7年度予算編成に向けた考え方」の「当面の経済財政運営について」のなかでも、「まずは、春季労使交渉による賃上げの流れを中小企業・小規模事業者、地方等でも実現し、医療・介護など、公的価格に基づく賃金の引上げ、最低賃金の引上げを実行する」とあり、最重要課題の一つとして位置づけられていることがわかります。

医療DX、地域医療構想、医師の偏在対策も

骨太の方針・第3章では、2025年度から2030年度までの6年間の財政再建方針として「経済・財政新生計画」が示されました。
国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度までに黒字化させる目標を維持し、取り組みを後戻りさせることなく、「債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指し、経済再生と財政健全化を両立させる歩みを更に前進させる」という考え方のもと、医療関連では次のようなことが盛り込まれました。

●医療資源の不足に対応するには?
「医療・介護DXの政府を挙げての強力な推進、ロボット・デジタル技術やICT・オンライン診療の活用、タスクシフト/シェア、医療の機能分化と連携など地域の実情に応じ、多様な政策を 連携させる必要がある。」

●地域医療の整備について
「国民目線に立ったかかりつけ医機能が発揮される制度整備、地域医療連携推進法人・社会福祉連携推進法人の活用、救急医療体制の確保、持続可能なドクターヘリ運航の推進や、居住地によらず安全に分べんできる周産期医療の確保、都道府県のガバナンスの強化を図る。地域医療構想について、2025年に向けて国がアウトリーチの伴走支援に取り組む。
また、2040年頃を見据えて、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少等に対応できるよう、地域医療構想の対象範囲について、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体に拡大するとともに、病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る。」

●医師の偏在について
「医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在の是正を図るため、医師確保計画を深化させるとともに、医師養成過程での地域枠の活用、大学病院からの医師の派遣、総合的な診療能力を有する医師の育成、リカレント教育の実施等の必要な人材を確保するための取組、経済的インセンティブによる偏在是正、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大等の規制的手法を組み合わせた取組の実施など、総合的な対策のパッケージを 2024 年末までに策定する。あわせて、2026 年度の医学部定員の上限については2024 年度の医学部定員を超えない範囲で設定するとともに、今後の医師の需給状況を踏まえつつ、2027 年度以降の医学部定員の適正化の検討を速やかに行う。」

●ピックアップされた健康対策とは?
「がん対策、循環器病対策、難聴対策、難病対策、移植医療対策、慢性腎臓病対策、アレルギー対策、依存症対策、栄養対策、睡眠対策、COPD対策等の推進や、予防接種法に基づくワクチン接種を始めとした肺炎等の感染症対策の推進を図るとともに、更年期障害や骨粗しょう症等に対する女性の健康支援の総合対策の推進を図る。」

骨太の方針がメタボ化?

そのほか、今回の骨太の方針では、「認知症施策推進基本計画を策定し、認知症施策を推進する」こと、「リフィル処方について、活用推進」を続けること、「全世代型健康診断によるプロアクティブケアの推進、ウェアラブル端末などの活用による健康データの利活用などの視点も踏まえた未来型健康医療モデル」を実証することなども盛り込まれました。

総花的にいろいろなトピックが盛り込まれ、“骨太”の方針のはずが「メタボ化している」との指摘もありますが……、国の方針を知ることは医療機関運営を考える上でも大切です。賃上げや医療DXなどは繰り返し登場していますので、やはり重要視されていることがわかります。

◎参照
内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024」
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2024/decision0621.html

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