偏在解消のため、医師少数地域での勤務経験を一部病院の管理者要件に?
医師の偏在について議論を重ねていた、厚生労働省の有識者会議「医療従事者の受給に関する検討会」「医師受給分科会」が12月18日、中間とりまとめを報告しました。
- 厚労省・医療従事者の受給に関する検討会 医師受給分科会(第17回)
(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000188544.html)
医師の偏在は以前からずっと指摘されているものの、まだ改善に至っていません。
「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査」の結果を見ると、人口10万人あたりの医師数は全国平均で240.1人なのに対し、もっとも多い徳島県は315.9人、もっとも少ない埼玉県は160.1人と、約2倍の開きがあります。
■人口10万人あたりの医師数
上位 ①徳島 315.9人 ②京都 314.9人 ③高知 306.0人
下位 ①埼玉 160.1人 ②茨城 180.4人 ③千葉 189.9人
また、診療科間の偏在もあります。こうした現状を受け、中間とりまとめでは、医師偏在対策として次のようなことがあげられました。
①都道府県における医師確保対策の実施体制の強化
・都道府県ごとに、定量的な現状分析に基づく「医師確保計画」を策定する
・効果的な医師派遣を行うために、地域医療対策協議会で医師派遣の方針を整理する
・今後増える「地域枠の医師」の定着を図るため、キャリア形成プログラムを策定する
など
②医師養成課程を通じた地域における医師確保
・医師が少ない都道府県の知事が管内の大学に対し、入学枠に地元出身者枠の設定・増員を要請できるようにする
・都道府県内の医学部では十分に地域枠を確保できない場合、医師が多い都道府県の大学医学部に地域枠を設定できるようにする
・診療科ごとの将来の医師ニーズの見通しを、国全体、都道府県ごとに明確化し、国が情報提供する
など
③地域における外来医療機能の不足・偏在等への対応
・医師偏在の度合いを可視化し、新たに開業しようとする医療関係者の経営判断に活用してもらう
・不足している外来機能、充足している外来機能に関する機能分化・連携の方針について、地域医療構想調整会議を活用して協議し、地域ごとに方針を決定する
など
④医師の少ない地域での勤務を促す環境整備の推進
・医師が少ない地域で勤務する医師が疲弊しないよう、医師間の遠隔相談や診療支援を
・医師が少ない地域で一定期間以上勤務した医師を、厚労省が認定する制度を創設する
・上記の“認定医師”であることを、医師派遣・環境整備機能をもつ地域医療支援病院の管理者に求められる基準のひとつとする
・医師派遣を支える医療機関に経済的なインセンティブを与える
など
地域や診療科間の医師の偏在が続いていること、医師不足地域で働く医師が疲弊しないような環境を整えなければいけないこと――に関しては、誰も異論はないでしょう。しかし、「具体的にどうやって解決を図るのか」に関しては、まだ賛否両論あります。
なかでも、“医師少数地域”での一定期間以上の勤務経験を持つ医師を認定し、一部の地域医療支援病院の管理者要件とすることについては、「(対象が少ないため)インセンティブが十分に働かず、効果が小さい」という意見もあった一方、「医師が少ない地域での診療を実質的に義務化することになる」と反対する意見も出ています。
厚生労働省は、これまでの議論をふまえ、医療法と医師法等の改正法案を取りまとめて次期通常国会に提出する予定です。
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