医師の働き方改革ですすむ「タスクシフト」

2024年4月から医師にも時間外労働の上限規制が適用されるようになります。
労働時間短縮を進める方策の一つとして注目されているのが「タスクシフト」です。医師が行っている業務を多職種がカバーすることで、医師が医師にしかできないことに専念しやすくし、業務時間の短縮につなげようというもの。
国もタスクシフトを後押しし、医師以外の職種の業務を拡大する法改正が行われたり、タスクシフトに関する通知を出したりしています。

10月から救命士や放射線技師などの業務拡大

2021年10月からは、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士の4職種について法改正が行われ、業務範囲が広がりました。

具体的には、次のとおりです。

●診療放射線技師
RI検査の一連の流れのなかで診療放射線技師に認められていたのは、以前は「撮像」の部分のみでしたが、静脈路を確保し、RI検査医薬品を投与する行為、投与終了後に抜針・止血する行為が可能になりました(診療放射線技師法第24条2項)。

 

第78回社会保障審議会医療部会(2021年2月8日)
資料「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について」

 

また、医師または歯科医師が診察した患者について、その医師または歯科医師の指示を受けて病院や診療所以外の場所に出張して超音波検査を行うことも認められました(同)。

●臨床検査技師
超音波検査において、静脈路を確保して造影剤を接続して注入する行為、その造影剤の投与が終わった後に抜針・止血する行為が可能になりました(臨床検査技師法等に関する法律第20条の2第1項)

 

第78回社会保障審議会医療部会(2021年2月8日)
資料「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について」

 

また、採血に伴い静脈路を確保し、電解質輸液(ヘパリン加生理食塩水を含む)を接続する行為や、静脈路を確保し、成分採血装置を接続・操作する行為、終了後に抜針・止血する行為も臨床検査技師の業務として認められるようになりました。

●臨床工学技士
・手術室等で生命維持管理装置や輸液ポンプ・シリンジポンプに接続するために静脈路を確保し、それらに接続する行為
・心・血管カテーテル治療で、身体に電気的負荷を与えるために負荷装置を操作する行為
・手術室で行う鏡視下手術で、体内に挿入されている内視鏡用ビデオカメラを保持し、術野視野を確保するために操作する行為

これらも臨床工学技士の業務となりました(臨床工学技士法第37条第1項)。

●救急救命士
医療機関に搬送されるまでの間(病院前)に重度傷病者に対して実施可能な救急救命処置を救急外来においても実施可能になり、初めて病院内での処置ができるようになりました(救急救命士法第44条第2項)。

多職種にシフト・シェア可能な業務とは

また、2021年9月30日には「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」と題した通知が、厚生労働省医政局より出されました。
この通知では、①看護師、②助産師、③薬剤師、④診療放射線技師、⑤臨床検査技師、⑥臨床工学技士、⑦理学療法士、⑧作業療法士、⑨言語聴覚士、⑩視能訓練士、⑪義肢装具士、⑫救急救命士――12の職種について、医師からのタスクシフトやタスクシェアが可能な業務の具体例が紹介されています。

また、事務職員も含めて職種にかかわらずタスクシフトやタスクシェアを進めることが可能な業務として、次の7項目が挙げられました。

①診療録等の代行入力
②各種書類の記載
③医師が診察する前に、医療機関の定めた定型の問診票等を用いて患者の病歴や症状などを聴取すること
④日常的に行われる検査に関する定期的な説明、同意書の受領
⑤入院時のオリエンテーション
⑥院内での患者移送や誘導
⑦症例実績や各種臨床データの整理、研究申請書の準備、カンファレンスの準備、医師の当直表の作成等の業務

具体的にどのような業務をタスクシフト、タスクシェアしていくのかは、それぞれの医療機関の状況によって変わるでしょう。2024年に向けて、改めて各職種の仕事を振り返ることが求められています。

 

◎参考
第78回社会保障審議会医療部会(2021年2月8日)配布資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000210433_00016.html

厚生労働省医政局長 通知(2021年5月28日付)
「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」の公布について
https://www.jaam.jp/info/2021/files/20210601_2.pdf

厚生労働省医政局長 通知(2021年9月30日付)
「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」
https://www.jshp.or.jp/cont/21/1004-2.pdf

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