コラム詳細

　2026年度の診療報酬改定に向けた議論が本格化するなか、医療機関の経営の厳しさが浮き彫りになっています。特に病院経営の厳しさが連日報道されていますが、診療所も、医業収支・経常収支ともに赤字の割合が増えています。
　また、無床診療所は、年々数が増え続け、競争も激化しています。
そうしたなか、開業場所として人気な１つが、複数のクリニック・薬局などが集まった「医療モール（メディカルモール）」です。医療モールで開業することのメリット、注意点をお伝えします。

■医療モールで開業するメリットとは？

 
・単独で開業するよりも認知されやすく、集患しやすい
　医療モール全体としてのブランディング、広報活動が行われるため、開業早期から知ってもらえ、患者さんが集まりやすいという良さがあります。

・初期投資を抑えやすい
　トイレや待合室、あるいは高度医療機器などの共同利用により、設備投資を抑えることができます。また、内装工事や医療機器等のレンタル・購入も、一括交渉することで優位に交渉を進めやすくなります。

・クリニック間で連携することで、専門性を発揮した診療を行える
　医療モール内のほかの診療所の専門医と連携し、専門外の患者さんは紹介し合うことで、集患力が向上するとともに、ご自身の専門性を十分にいかした診療を行えます。

・好立地、利便性の高いビルへの入居が可能に
　多くの場合、医療モールは、綿密な診療圏調査を行ったうえで場所を決めています。個別の診療所では開業の難しいオフィスビルや商業ビルでの開業も可能になるなど、立地の良さも大きな魅力です。

■医療モールが成功しない要因とは？

 
　メリットの多い医療モールですが、すべての医療モールが成功しているわけではありません。なかには、複数のクリニックが入ると聞いて開業を決めたものの、予定していたほかのクリニックが入らず、空室ばかりが目立ってモールとしての魅力がなかった……なんて話もまれに耳にします。

　経営戦略に詳しい武蔵野大学の積田淳史氏（現・成城大学）、新津泰昭氏は、「医療モール・マネジメントの展望」と題した論文で、医療モールが成功しない要因として、次の４つを挙げています。
 
・クリニックの連携不足
・クリニックや医師の手配の失敗
・見込み通りの集客が得られない
・コスト削減効果が薄い

■失敗しないために確認しておくべきこと

 
　医療モールでの開業を考えるときには、上記のような失敗が起こらないよう、本当に医療モールとしてのメリットが発揮されるのかどうかをしっかり確認して検討することをおすすめします。

・立地や推定患者数は本当に想定通りか
　来院患者数は具体的にどのような計算から推定しているのかを確認するとともに、実際に建設予定地にも足を運んで、ご自身が行いたい診療と住民層や患者層がマッチしているのかをご自身の目で確かめましょう。

・ほかのクリニックの入居状況はどうか
　複数のクリニック・薬局が集まってこそ、患者さんの利便性が増し、医療モールとして成り立ちます。どのような診療科のクリニックが入るのか、競合することはないか、そもそもクリニックは集まるのか、問い合わせ状況なども含め、確認しましょう。

・医療モールの運営会社はどのようなサービスを提供するのか
　医療モールは、ただ複数の診療科のクリニックが集まるだけではなく、モール全体で統一したマネジメントやブランディングが行われることで、新しい価値が生まれ、魅力が増します。
　医療モール内で連携を取りやすい工夫はあるのか、医療モールの運営会社がどのようなサポートをしてくれるのか、過去の開発実績も含めて確認しておくと安心です。
 

　メディカルクレアでは、「Medical Prime（メディカルプライム）」「Medical Tower（メディカルタワー）」という２つのブランドで、医療モールを運営してきました。新たな医療モールも複数計画中ですので、医療モールでの開業をご検討されている先生はぜひお気軽にご相談ください。
 

◎参照
・第120回社会保障審議会医療部会資料
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001589374.pdf
・積田淳史氏・新津泰昭氏「医療モール・マネジメントの展望」
https://www.musashino-u.ac.jp/research/pdf/09_tsumita_niitsu.pdf?utm_source=chatgpt.com