2023年度には14人の医師・歯科医師が保険医取消に
2023年度の保険医療機関等の指導・監査等の実施状況が公表されました。これによると、保険医療機関等で指定取消または指定取消相当になったのは21件、保険医等の登録取消または登録取消相当になったのは14人でした。
そもそも「指導、監査」とは?
保険医療機関・保険医に対する指導や監査は、療養担当規則(「保険医療機関及び保険医療養担当規則」)の遵守を指導・監督し、保険診療の質向上と適正化を図ることを目的に実施されています。具体的には、次のような種類があります。
まず、「個別指導」とは、指導が必要と思われる保険医療機関等に対し、個別に面接懇談方式で行うもの。「新規個別指導」は、個別指導のうち、新たに指定された保険医療機関等を対象として行なわれるもの。 「集団的個別指導」は、地方厚生局と都道府県が共同で、指導対象となる保険医療機関等を一定の場所に集めて個別に簡便な面接方式で行う指導です。レセプト1件あたりの平均点数が高い保険医療機関などが、集団的個別指導の対象となります。
また、施設基準を届け出ている保険医療機関について、地方厚生局が保険医療機関に直接赴いて、届け出られている施設基準の充足状況を確認するために行うのが「適時調査」。診療内容や診療報酬の請求について不正や著しい不当を疑う理由がある場合に実施されるのが「監査」です。
そして、監査で確認された事実に応じて、「取消」「戒告」「注意」という必要な措置が採られます。
個別指導の対象となるのは?
2023年度に個別指導(新規個別指導は除く)を受けた保険医療機関等は1464件。その内訳は、医科が525件、歯科が512件、薬局が427件でした。
ちなみに、個別指導の対象となるのは、次のような場合です。
・診療報酬請求などに関する情報提供があった場合
・個別指導を実施したが改善が見られない場合
・集団的個別指導を受けた保険医療機関のうち翌年度もなお高点数保険医療機関に該当する場合 など
ただし、実際にどのような理由で個別指導に選定されたのかは、医療機関には知らされません。
2023年度の保険指定取消は21件・14人
2023年度に実施された監査は46件で、内訳は医科と歯科がそれぞれ22件、薬局が2件でした。そして、21件の医療機関等、14人の保険医等が指定取消または取消相当となりました。内訳は、医科の保険医療機関が11件(うち取消相当が6件)、歯科が9件(同6件)、薬局が1件(同1件)。医科の保険医が5人、歯科医師が9人(うち取消相当が1人)です。
なお、取消処分を受けると、原則として5年間、保険医療機関などの再指定、保険医等の再登録を受けることはできません。また、取消処分に該当するものの、保険医療機関等がすでに廃止されている場合や保険医等がすでに登録を抹消している場合には「取消相当」処分となり、取消処分と同じく、原則5年間、再指定・再登録を受けることができません。
監査のきっかけは情報提供が多い
指定取消等に至ったきっかけは、保険者、医療機関従事者、医療費通知に基づく被保険者などからの情報提供が18件、その他(警察の摘発、個別指導など)が3件でした。
また、取消処分等の理由は、ほとんどが不正請求で、具体的には次のようなものがあります。
実際には行っていない保険診療を行ったものとして請求する「架空請求」、実際に行った保険診療に行っていない保険診療を追加して請求する「付増請求」、実際に行った保険診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて請求する「振替請求」、自由診療を行い、その費用を受領しているにもかかわらず、保険診療として不正に請求する「二重請求」、診療録に記載のない、根拠のない請求を行う「そのほかの請求」など。
返金金額は、総額で46億2338万円に及びました。
◎参照
厚生労働省「令和5年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000188884_00004.html
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