6月末で21施設、「介護医療院」の行方

2018年4月に「介護医療院」が創設されましたが、6月末現在で、全国で21施設の介護医療院がすでに開設されているそうです。

介護医療院とは、療養病床(主に介護療養病床)の新たな転換先として創設されたもの。
介護療養病床は2006年の時点で「2011年度末までに廃止する」と決定され、08年5月には、療養病床からの転換先として「介護療養型老人保健施設」(医療機能を介護報酬で評価した介護老人保健施設)が創設されましたが、なかなか転換が進まず、現状、2024年3月末までに移行期間が伸びています(なお、2012年以降、介護療養病床の新設は認められていません)。

 

療養病床の転換が進まない理由

転換が進まない背景として、「療養病床の在り方等に関する検討会」では、現状の介護療養病床、医療療養病床について、次のような特徴が指摘されました。

  • 平均在院日数が長い(介護療養病床は約1年半)
  • 死亡退院が多い(介護療養病床は約4割)
  • 特養や老健よりも、医療必要度が高い人が入院している
  • 要介護度や年齢も高い人が多い

 

介護医療院の概要

そこで、「住まい」の機能を強化した上で、経管栄養や喀痰吸引などの「日常生活上必要な医療処置や、充実した看取りを実施する体制」を整えた、新たな施設類型が提案されました。
それが、介護医療院です。

介護医療院に求められる人員体制は下の表のとおりです。

介護 医療院の基準( 人員基準) 表1

※厚生労働省資料「介護医療院の概要」より
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196478.html

 

介護医療院開設のためのコールセンターも

6月末時点で開設された「21施設1400床」の介護医療院のうち、介護療養病床(病院)からの転換は621床、介護療養型老人保健施設からの転換は629床でした(残りは、医療療養病床、有床診療所など)。
4月末時点では5施設383床でしたので、介護医療院への転換は徐々に進んでいるようです。

4月には、介護医療院のあるべき姿を追求することを目的に、日本慢性期医療協会が中心となって、「日本介護医療院協会」(https://jamcf.jp/kaigoiryouin/index.html)も発足。
また、厚生労働省は、介護医療院の開設に関する相談窓口として、コールセンターも設けています。
※詳細は、厚労省HP「介護医療院について」参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196478.html

 

介護医療院に転換した病院の話

そのほか、病院経営情報誌などでも、介護医療院に転換した病院の記事などが紹介されています。
たとえば、『病院羅針盤』(産労総合研究所発行)9月1日号では、石川県内で第1号の介護医療院の認定を得た社会医療法人財団董仙会(けいじゅヘルスケアシステム)の神野正博理事長の記事が掲載されていました。
神野氏は、介護療養型老人保健施設から「介護医療院(Ⅱ)」に転換したことについて、「転換をためらう理由はなかった」と述べ、その理由として、生活主体のコンセプトが法人戦略に合致していたこと、人員基準上も構造基準上も大きな変化は必要なかったことなどを挙げています。
また、転換時から1年限定で算定可能な「移行定着支援加算」(93単位/日、2021年3月末まで)についても、「経営上、原価のかからない、いわば真水の収入」とメリットを指摘されています。

こうした具体的な情報が出てくるにつれ、介護医療院への転換は今後ますます進むでしょう。働く職員にとっては、療養施設であるとともに、「生活の場」であることを意識して患者さんやご家族に対応することが求められます。

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