「過労自殺」の6割は医療機関の受診なし
精神障害で自殺したとして労災認定された人のうち、6割は医療機関を受診していない。
こう、厚生労働省が10月30日に公表した「令和2年版 過労死等防止対策白書」(以下、過労死白書)で紹介されました。
過労死白書とは、過労死等防止対策推進法にもとづいて、毎年とりまとめられる報告書で、過労死の概要や政府が過労死の防止のために講じた施策の状況をまとめたものです。
今回は、この令和2年版の過労死白書の内容をご紹介します。
半数は発病から1カ月以内に自殺に至っている
過労死白書によると、業務によるストレスで精神障害を発病したとする労災請求件数は、2000年度には212件だったのが、2010年度には1,181件、2019年度には2,060件になり、年々、まさに右肩上がりに増えています。
同白書では、2015年4月から2017年3月までの2年間に労災認定された精神障害の事案のうち、自殺に至った167件の分析結果も紹介されました。167件の内訳は、男性が162件、女性が5件で、また発病時の年齢別では「40~49歳」が56件で最も多く、次いで「30~39歳」が42件、「29歳以下」が34件でした。
発病から死亡までの日数別にみると、29日以下が89件(51.5%)と半数以上を占めていて、精神疾患を発病してから早いタイミングで自死に至っていることがわかります。そのほか、「30~89日」が35件(21.0%)、「90~179日」が17件(10.2%)、「180~359日」が10件(6.0%)、「360日以上」が19件(11.4%)でした。
さらに、精神科などの医療機関の受診状況をみると、167件中、「受診歴あり」は66件のみで、残りのおよそ6割にあたる101件では受診歴はありませんでした。
自殺に至った原因は
精神障害の労災認定基準は、次の3つのすべてを満たすことが求められます。
(1)認定基準の対象となる精神障害を発病していること
(2)認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
(3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
では、自殺に至るほどの「強い心理的負荷」とはどのようなものだったのでしょうか。
出来事別に分析した結果では、「恒常的な長時間労働」が70件でもっとも多く、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が59件、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」が40件でした。
やはり長時間労働の影響は大きいのです。
メンタルヘルスケア対策で欠かせないこと
新聞報道によると、以上のような結果を受けて、厚生労働省は「働き手が悩みを抱えていることを早期に発見して対応することが非常に重要」と指摘しています。
職場におけるメンタルケア対策には次の4つのケアが必要です。
・セルフケア
・ラインによるケア
・事業場内の産業保健スタッフによるケア(産業医、衛生管理者など)
・事業場外資源によるケア
このうち、セルフケアとラインによるケアがより効果的に実施されるよう支援を行うとともに、メンタルヘルスケア対策の第一歩である「心の健康づくり計画」の策定や評価にかかわり、外部の医療機関との連絡役の担うのが、産業医です。
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