「新型コロナの診療手引き」第2版が公開

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部より、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」の第2版が5月18日に公開されました。

第1版が公開されたのが3月17日で、それから2か月が経ち、その間に蓄積された知見が盛り込まれています。ページ数も、第1版の17ページから32ページに増えました。

ここでは、第2版で追加されたことを中心に主な内容をお伝えします。

 

確定診断に抗原検査を追加

 

全体の構成は、①病原体・臨床像、②症例定義・診断・届出、③重症度分類とマネジメント、④薬物療法、⑤院内感染対策、⑥退院・生活指導――という6章立てです。

 

1章の「病原体・臨床像」で追加されたのは、次のような内容です。

 

  • 感染可能期間について

・感染可能期間は、発症の2日前から発症後7~14日間程度

・重症例ではウイルス量が多く、排泄期間も長い傾向にある。発症から3~4週間、病原体遺伝子が検出されることはまれではない

 

  • 合併症について

・血栓症を合併する可能性がある

・小児では、川崎病様の症状を呈する事例もある

 

  • 重症化マーカーについて

新たな重症化マーカーとして、①Dダイマーの上昇、②CRPの上昇、③LDHの上昇、④フェリチンの上昇、⑤リンパ球の低下、⑥クレアチニンの上昇――の6つも「有用な可能性がある」と指摘されました。

 

2章の「症例定義・診断・届出」では、診断方法のひとつとして「抗原検査」が追加され、「PCR検査とともに確定診断として用いることができる」と明記されています。ただし、抗原検査陽性の場合は「新型コロナウイルス感染症の確定診断」となりますが、抗原検査陰性の場合は「医師がPCR検査を行うかどうか判断する」こととなります。

 

重症度分類別治療のポイント

 

3章は第1版では「治療」というタイトルでしたが、「重症度分類とマネジメント」に変わり、「軽症」「中等症Ⅰ(呼吸不全なし)」「中等症Ⅱ(呼吸不全あり)」「重症」という重症度別の支持療法がまとめられました。

 

「軽症」の場合は、「経過観察のみで自然に軽快することが多い」とした一方、「診察時は軽症と診断されても、発症2週目までに急速に病状が進行することがある」ため、「高齢者、基礎疾患(糖尿病・心不全・慢性呼吸器疾患・高血圧・がん)、免疫抑制状態、妊婦などのリスク因子がある場合、病状が進行する可能性を想定して入院とする」とされました。

 

「中等症」の場合は、入院になります。

中等症は呼吸不全のないケースとあるケースに分けられ「呼吸不全なし」では、「低酸素血症を呈する状態に進行しても呼吸困難を訴えないこともある」ため、「バイタルサインおよび酸素飽和度を1日3回程度測定する」こと、「抗ウイルス薬の投与が考慮される」ことなどが指摘されました。

「呼吸不全あり」の場合には、原因を推定するとともに、「必要に応じて人工呼吸器やECMOの医療体制の整う施設への転院を考慮する」とされました。

 

「重症」例については、新型コロナウイルス感染症の肺炎では、比較的軽症な「L型」と重症の「H型」に分類され、呼吸療法や鎮静の対応が異なること、一部はL型からH型へ移行するものの、移行の判定が難しいことなどが指摘されました。

 

新型コロナに対する薬物療法は

 

4章の「薬物療法」では、まず、現時点では新型コロナウイルス感染症に対して「抗ウイルス薬による特異的な治療法はない」こと、「抗ウイルス活性を有する抗ウイルス薬があったとしても、治療効果を得るには早期に投与されることが求められる」ことが強調されています。

そのうえで、5月7日に特例承認された「レムデシビル」をはじめ、日本国内でも臨床研究・試験が開始されている薬剤が紹介されました。

 

なお、新型コロナウイルス感染症に対する薬物療法については、日本感染症学会が『COVID-19に対する薬物治療の考え方』をまとめており、5月14日付で第3版が公表されています。

 

※ 日本感染症学会『COVID-19に対する薬物治療の考え方』

http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_200514.pdf

 

防護具が不足するなかでの院内感染対策は

 

5章の「院内感染対策」では、個人防護具が入手困難となっているなか、「N95マスク」や「サージカルマスク」「長袖ガウン」「ゴーグル」「フェイスシールド」の例外的な取扱いについてのポイントが紹介されています。

いずれについても効率的な使用を促し、たとえば、N95マスクについては「滅菌器活用等による再利用に努める」こと、「複数の患者を診察する場合に、同一のN95マスクを継続して使用する」ことなどが紹介されました。

 

6章の「退院・生活指導」では、4月2日付の事務連絡の内容を受けて、「軽快後、24時間後にPCR検査を実施。陰転化が確認されたら、前回検体採取後24時間以後に再度採取を行い、2回連続で陰性が確認されたら退院可とする」との退院基準が示されました。

 

※厚生労働省『新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第2版』

https://www.mhlw.go.jp/content/000631552.pdf

 

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