インスリン自己注射のサポートは医行為になる?

医師法第17条には、「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定められています。

ただ、医業なのか、医業ではないのか、悩ましい場面もときにあると思います。

 

先日、経済産業省の「グレーゾーン解消制度」において、「介護職員によるインスリン自己注射サポートについて」の照会があり、厚生労働省から回答がありました。

 

ちなみに、グレーゾーン解消制度とは、平成26年に施行された「産業競争力強化法」に伴い創設された制度で、事業者が新しく事業を開始する際、現行の規制の適応範囲が不明確な場合に、具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を確認できるという制度です。

 

インスリンの自己注射のサポートは医業?

 

今回、照会があったのは、利用者自身がインスリン自己注射を行う際に、介護職員が利用者に対して声かけや血糖値測定などのサポートを行うのは医師法17条に違反するかどうか、というものでした。

インスリンの自己注射が必要な在宅患者さんに対して、介護職がサポートすることは、よくある場面だと思います。どのようなサポートであれば、法律上、問題がないか、懸念している方も少なくないでしょう。

 

この事業者が行っているサポートの具体的な手順は下記のとおりです。

 

  1. サービス利用者の自宅に介護職員が訪問し利用者に挨拶、体調確認後、昼食(夕食)の調理を行う。
  2. 食事ができたら、インスリン注射を行うことを忘れないように利用者に声をかける。
  3. 介護職員が血糖値測定器とセンサー(試験紙)を準備し、利用者が測定器にセンサー(試験紙)をセットするが、この作業が難しい場合は、介護職員がセンサー(試験紙)のセットの誘導・促しを行う。もしくは介護職員が測定器にセンサーをセットする。
  4. 介護職員が測定器の針を指にさすよう声かけし、利用者が自分でさし血糖値測定器の先端に血液をつける。
  5. 血糖値測定器に表示された血糖値を利用者と介護職員が一緒に確認し、介護職員が血糖値の数値を読み上げる。
  6. 測定した血糖値により投与すべきインスリンの量が変わるので、利用者が血糖値の数値を確認するが、念のため介護職員があらかじめ指示された血糖値の数値と確認(ダブルチェック)を行う。
  7. 家族が未使用の注射器2本(昼、夜用)を箱に入れて用意しているので、その中の1本を介護職員が利用者に手渡す。
  8. 利用者が注射器のメモリをインスリンの正しい数量に合わせ、きちんと合っているか介護職員が確認する。
  9. 介護職員が利用者に腹部に注射器をさすよう声かけをし、その様子を介護職員が見守る。
  10. 介護職員が使い終わった注射器を使用済みの箱に片付ける。
  11. 食事を配膳、食事量の確認と服薬介助、片付け、記録を行う。
  12. 翌朝、家族が前日の使用済みの注射器の針を抜いて処分し、新しい注射器2本に針をつけて未使用の箱に入れ当日使用分の注射器を用意する。

 

声かけ、見守り、測定器の準備等はOK

 

つまり、インスリンの注射器をさすのも、血糖値測定器の針を指にさすのも利用者自身が行い、介護職員はあくまでも声かけと見守りを行うのですが、血糖値測定器とセンサーを準備して測定器のセンサーをセットすることは介護職員が行うこともある、ということです。

 

この照会に対する厚労省の回答は、「記載の行為は、医行為に該当せず、無資格者がこれを業として行ったとしても、医師法第17条に違反しない」というものでした。

 

◎厚生労働省の回答

https://www.mhlw.go.jp/shinsei_boshu/gray_zone/dl/jisseki_04.pdf

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