ネット上の誹謗中傷に、どう立ち向かうのか
先日(5月29日)、NHKの朝の情報番組「おはよう日本」で、SNS上での誹謗中傷に対して「発信者情報開示命令」の申し立てを行った医師の話が紹介されていました。
ネット上の誹謗中傷を受けたときにはどうすればいいのか――。番組に登場した医師の場合、悪意のある投稿者20人超を特定し、投稿の削除や和解金の支払いにつなげることができたそうです。
メディア出演が誹謗中傷のきっかけに
「おはよう日本」に登場した埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭医師は、新型コロナの流行期にメディアの取材に応じて医療現場の現状や感染症対策の重要性を伝えていたところ、毎日のようにSNS上で誹謗中傷を受けるようになったそうです。
心身に不調をきたしたほか、家族や仕事、職場への影響も考えた岡先生は、弁護士に相談。
投稿者を特定するために、「発信者情報開示命令」の手続きを行いました。
「発信者情報開示命令」とは?
発信者情報開示命令とは、2022年10月からはじまった新しい司法手続きです。これは、インターネット上で誹謗中傷を受けた人の情報開示に関する負担を減らすために創設されたもの。被害投稿を受けた人が、裁判所に対して発信者情報開示命令の申し立てを行い、それを裁判所が認めると、裁判所は事業者側に、投稿者のIPアドレスや氏名、住所、電話番号などの情報開示を命令します。
この制度によって、訴訟ではなく、簡易な手続きで情報開示が行われるようになりました。実際、発信者情報開示命令の申し立ては急増していて、2024年の1年間に6,779件あり、前年に比べて1.7倍にも増えたそうです。
情報開示が認められるのは、どんなケースか?
ただし、発信者情報開示命令を求める申し立てを行っても、必ずしも裁判所に認められるとは限りません。番組では、情報開示が認められやすい条件として次の3つを紹介していました。
・当事者の社会的評価を下げる投稿
・外見などをからかう投稿
・明白なプライバシー侵害のある投稿
とはいえ、社会的評価を下げるといえるかどうか、明白なプライバシー侵害があるといえるかどうかの判断は難しいものです。批判的な内容であっても、表現の自由と考えられる場合もあります。ですから、目に余る投稿に悩んだ際は、やっぱり弁護士に相談して判断を仰ぐのがいちばんだと思います。あるいは、「違法・有害情報相談センター (https://ihaho.jp/)」という、総務省管轄の相談センターもあります。
Googleクチコミに対しても
岡先生のようにメディアへの露出はなくとも、医療機関で働く先生方は日々、多くの患者さんや家族と接していらっしゃいます。そうすると、ちょっとしたボタンの掛け違いから、相手が不満を募らせ、ネガティブなクチコミにつながるということもあると思います。そうしたクチコミが消えず、「心が折れそう……」といった声を耳にすることもあります。
悪意のある投稿には、毅然とした対応を。
SNSの投稿に限らず、Googleマップ上のクチコミについても、事実無根の投稿に対して、弁護士を介して発信者情報の開示請求を行ったところ、開示請求が行われていることを知った投稿者が自ら投稿を削除した――というケースもあると聞きます。こうした方法があることは、ぜひ知っておいてください。
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