初診からのオンライン診療のポイント

2022年度の診療報酬改定で、初診からのオンライン診療が正式に認められるようになりました。ただし、どんな患者さんでもオンライン診療に適するわけではありません。

そこで、初診からのオンライン診療に関する基本的なルールをまとめます。

 

■「初診からのオンライン診療」解禁に至るまで

 

オンライン診療が初めて保険収載されたのは、2018年度のこと。ただし、このときには、「初診から6か月以上を経過した再診の患者」のみで、「3か月に1回は対面診療が必要」など、対象患者はかなり限られていました。

 

その後、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けて、2020年4月10日付で厚労省が「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」と題した事務連絡を発出。これによって、“時限的・特例的”対応として、初診からの電話や情報通信機器を用いた診療が認められるようになりました。

 

そして、2022年1月28日に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、「指針」)が改訂され、正式に初診からのオンライン診療が認められるようになり、その内容をふまえて、4月の診療報酬改定で明記された――というのがこれまでの大まかな流れです。

 

■オンライン診療の点数

 

2022年度の診療報酬改定で、オンライン診療は次のような評価となりました。

 

初診料(情報通信機器を用いた場合) 251点

再診料(情報通信機器を用いた場合) 73点

外来診療料(情報通信機器を用いた場合) 73点

 

通常の初診料は288点なので、情報通信機器を用いた場合(つまりはオンライン診療の場合)は37点低くなります。ただし、再診の場合は同じです。

 

■初診のオンライン診療は、原則「かかりつけ医」

 

初診からのオンライン診療が正式に認められるようになったとはいえ、さすがに条件があります。「厚生労働省『オンライン診療の適切な実施に関する指針』に沿って診療を行った場合に算定する」こと、となっています。

では、「指針」にはどのように定められているのでしょうか? ポイントをお伝えします。

 

まず、初診については「かかりつけの医師」が行うことが原則、となっています。では、ここでいう「かかりつけの医師」はというと、「『オンライン診療の適切な実施に関する指針』に関するQ&A」によると、「日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師」であり、最後の診療からの期間や定期的な受診の有無によって一律に制限するものではない、とのことです。

 

■かかりつけ医以外が初診のオンライン診療を行うには?

 

初診をオンライン診療で行う場合にはかかりつけの医師が行うことが“原則”――。ということは例外もあります。

「指針」には、次のように明記されています。

 

ただし、医学的情報が十分に把握でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも、オンライン診療を実施できる。

上記以外の場合であって、初診からのオンライン診療を行おうとするときは、診療前相談を行う。

 

つまり、「かかりつけの医師」以外が初診をオンライン診療で行う場合、2つのパターンがあります。

一つは、過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、地域医療情報ネットワーク、お薬手帳、Personal Health Record(PHR)等から必要な医学的情報を把握でき、患者の症状と合わせて医師がオンライン診療で可能と判断した場合。

 

もう一つは、「診療前相談」を行った場合です。

 

■「診療前相談」とは?

 

診療前相談は、かかりつけの医師以外の医師が初診からオンライン診療を行い、かつ、事前に患者さんの医学的情報を十分に把握できない場合に、映像を用いたリアルタイムのやりとりで、医師がその患者さんの症状、医学的情報を確認するためのものです。

適切な情報が把握でき、医師・患者の双方がオンラインでの診療が可能であると判断し、相互に合意した場合に、オンライン診療に移行します。

なお、診療前相談は、診断、処方などの診療行為は含みません。

 

■オンライン診療が困難な症状とは?

 

ところで、オンライン診療を行う際は、患者さんが訴える症状がオンライン診療に適するかどうかを、医師が医学的に判断する必要があります。その際、参考にすべきものとして挙げられているのが、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」(https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2021/06/20210603172150.pdf)です。

 

これを見ると、「問診と画⾯越しの動画のみで診断を確定することのできる疾患はほとんどない」と断った上で、「オンラインか対⾯かの判断は『緊急性』および『対⾯による情報量あるいは対応の違い』の観点からすべき」と、次のように明記しています。

 

「緊急性により初診からのオンライン診療に適さない状態」は、“ただちに”もしくは“できるだけ早く”対⾯診療を受けるべき状態である(数⽇程度の猶予があれば、初診からのオンライン診療は可能である)。

「情報量や対応⼿段の問題で初診からのオンライン診療に適さない状態」は、診断のために医療機関における検査が必要な状態、あるいは投薬以外の治療を開始すべき状態、である。

 

■初診のオンラインでは処方できない薬

 

また、医薬品の処方にも制限があります。

「指針」では、初診からのオンライン診療の場合、また、新たな疾患に対して医薬品の処方を行う場合は、前述の日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うこと、となっています。

 

さらに、初診のオンライン診療では下記の処方は行えません。

 

・麻薬及び向精神薬の処方

・基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品(診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤)の処方

・基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方

 

 

オンライン診療には慎重な先生方が多いと思いますが、今後、少しずつ広がっていくのではないでしょうか。

 

 

 

◎参考

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」

https://www.mhlw.go.jp/content/000889114.pdf

 

厚生労働省「『オンライン診療の適切な実施に関する指針』に関するQ&A」

https://www.mhlw.go.jp/content/000903640.pdf

 

一般社団法人日本医学会連合「日本医学会連合 オンライン診療の初診に関する提言」

https://www.jmsf.or.jp/uploads/media/2021/06/20210603172150.pdf

 

 

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