抗認知症薬、「副作用あれば中止・変更の検討を」

1月25日に開かれた厚生労働省の有識者検討会「第9回 高齢者医薬品適正使用検討会」は、認知症の治療薬を使用中に幻覚や暴力、めまいなどの副作用が疑われる症状が出た場合は、医師らに中止や薬の変更を検討するよう求める方針を決定しました。

抗認知症薬をめぐる変化

副作用が疑われたら、薬の中止や変更を検討する――。
こう書くと、ごく当たり前のように感じます。その背景には、抗認知症薬の副作用で症状が悪化するケースがあると医療現場から報告されている一方で、そのことが見過ごされてきたということがあるのだと思います。
遡れば、以前には「増量規定」と呼ばれるものがありました。
抗認知症薬の添付資料には、少量から開始し、一定期間後に増量するよう書かれています。たとえば、「アリセプト」の場合、下記のようになっています。

「1日1回3mgから開始し、1~2週間後に5mgに増量し、経口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者には、5mgで4週間以上経過後、10mgに増量する」(アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制)

以前は、医師の判断で規定よりも少量で処方する(増量をしない)と、診療報酬が減額されることがありました。そのことを問題視した医師らが「抗認知症薬の適量処方を実現する会」を設立し、一人ひとりの患者さんに合った用量で使用できるよう訴え、少量処方を行っても一律に査定しないよう厚生労働省が事務連絡を出したのが、2016年6月のことです。

その後、抗認知症薬をめぐっては、フランスが2018年8月から抗認知症薬を医療保険のカバーから外したことが、日本でもニュースになりました。

薬だけではなくケアも

今回の決定の内容は、昨年5月にまとめられた「高齢者の医薬品適正使用の指針」に追加される予定です。
この日の検討会の資料には、「副作用が疑われる場合は中止や他剤への変更を検討する」ことに加えて、「患者の機能保持や生活の質の向上に非薬物的対応の併用が推奨される」ことも明記されていました。
薬からケアの舵を切ったフランスのように、日本でも一人ひとりの患者さんに合わせ、薬だけに頼らない医療が求められつつあります。

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