病欠よりもコストのかかる「プレゼンティズム」

「プレゼンティズム(プレゼンティーイズム)」という言葉、ご存じですか?

職場に出勤はしているものの何らかの健康問題によって仕事のパフォーマンスが落ちている状態のことを指します。

このプレゼンティズムは、じつは病欠よりもはるかに経営に損失を与えることがわかっています。今回は、健康経営の要である「プレゼンティズム」についてお伝えします。

 

プレゼンティズム(プレゼンティーイズム)とは

 

プレゼンティズムとは、英語では「Presenteeism」と書き、「working while sick」のことです。つまり、職場に出勤している(Present)けれども、何らかの健康問題を抱え、生産性が落ちている状態を指します。

「プレゼンティーズム」または「プレゼンティーイズム」と書かれることもあります。

このプレゼンティズムは、企業や組織からすれば、間接的に健康関連コストが生じている状態になります。

 

ちなみに、プレゼンティズムとよく対で使われる「アブセンティズム(アブセンティーイズム、アブセンティーズム)」は、病気で休業している状態、つまり病欠のことです。

 

プレゼンティズムによる損失額は

 

健康問題に関連するコストと言えば、医療費や病欠・離職などによる損失などがありますが、それらよりもずっと大きい割合を占めるのが、プレゼンティズムによって生じるコストです。

具体的な割合は、研究によって異なりますが、プレゼンティズムが健康関連コストのうち最大の要因であることは国内外のいずれの研究でも共通しています。

※厚生労働省保健局「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」より

 

プレゼンティズムを測定する尺度

 

プレゼンティズムを評価する指標はいろいろと提案されていますが、経済産業省の「企業の『健康経営』ガイドブック」で紹介されているのは、次の5つです。

 

①WHO-HPQ

②東大1項目版

③WLQ(Work Limitations Questionnaire、タフツ大学医学部作成)の日本語版

④産業医科大学で開発された、WFun(Wrok Functioning Impairment Scale)

⑤QQmethod(健康問題の有無を確認した上で、4つの質問で評価する)

 

このうち「WHO-HPQ」は、WHOがハーバード大学と共同で開発した質問票で、プレゼンティズムに関する質問項目は次の3つです。

 

『WHO-HPQのプレゼンティズムに関する質問項目』

  1. あなたと似たような仕事(同じ職種、同じ業務)をしている労働者の普段のパフォーマンスをあなたはどのように評価しますか?
  2. 過去1~2年のあなたの普段のパフォーマンスをあなたはどのように評価しますか?
  3. 過去4週間のあなたの総合的なパフォーマンスをあなたはどのように評価しますか?

 

いずれも、「0」が誰でもできるような最低の仕事のパフォーマンス、「10」がもっともすぐれた労働者のパフォーマンスとして、10段階で評価してもらいます。

 

このWHO-HPQは質問項目3つのシンプルな内容ですが、さらにシンプルなのが、「東大1項目版」です。

 

『東大1項目版』

病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事を評価してください。 [      ]% (1%から100%)

 

 

プレゼンティズムの影響

 

プレゼンティズムが招くのは、仕事のパフォーマンスの低下だけではありません。

心臓病などの重大な病気を招きやすくなること、うつ病などのメンタルヘルス疾患を発症しやすくなること、そうした結果、長期休業のリスクが上がること――などが指摘されています。

たとえば、英国で行われた研究では、体調不良を自覚しつつも休まないで仕事を続けると、適切に病気休業を取った労働者よりも冠動脈疾患の罹患率が約2倍高かったそうです。

また、デンマークの研究では、体調不良でも出勤した回数が過去12カ月の間に8回以上あった労働者は、ない労働者に比べて、2年後にうつ病になるリスクが2.5倍高くなっていたという結果が出ています。

 

プレゼンティズムを改善するために

 

プレゼンティズムによるパフォーマンスの低下を改善することは、経営に直結します。

そのため、プレゼンティズムに注目し、健康づくりに取り組む企業が増えています。

 

メディカルクレアでは、従業員の方の健康を支援する産業医のご紹介を行っております。

それぞれの企業のご要望を把握し、そのニーズに合った産業医をご紹介することができます。まずはご相談ください。

 

◎参考

厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000171483.pdf

 

経済産業省「企業の『健康経営』ガイドブック」(改訂第1版)

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei-guidebook2804.pdf

 

武藤孝司「プレゼンティーイズム――これまでの研究と今後の課題――」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ohpfrev/33/1/33_25/_pdf

 

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