長時間労働の原因、病院と医師の間にズレ

国が働き方改革を推し進めているなか、医療機関も例外ではありません。むしろ、「過労死」が少なからず起こっており、働き方の見直しがより求められている業界です。

厚生労働省がこのほど公表した「平成30年版過労死等防止対策白書」では、「過労死等が多く発生しているとの指摘がある職種・業種」について調査・分析結果が報告されました。そのうちの一つが、医療界でした。ちなみに、ほかは自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業です。

医師は「脳・心臓疾患」、看護師は「精神障害」
前述の「平成30年版過労死等防止対策白書」によると、医療・福祉分野、もしくは別業界で働く医師・看護師に対して労災認定された、脳・心臓疾患事案52件、精神障害事案233件(2010年1月から2015年3月までの調査資料)を職種別に見ると、脳・心臓疾患でもっとも多いのが医師(34.6%)、精神障害でもっとも多いのが看護師(30.5%)でした。

脳・心臓疾患で労災認定を受けた医師(17件)について、発症時の状況を分析し、長時間労働につながる要因として考えられる業務を分類したところ、もっとも多かったのが「診療業務」(16件、94.1%)で、次いで「管理業務」(14件、82.4%)でした。

所定外労働の理由、病院と医師で認識にズレ
同白書では、全国の病院4,000件(有効回答1,078件)、調査対象病院に勤務する医師20,255人(同3,697件)、看護職員20,266人(同5,692件)を対象に行ったアンケート結果も報告しています。
このなかで気になったのが、「所定外労働が発生する理由」に対する病院の認識と、医師・看護職員の認識のズレです。

医師の所定外労働が発生する理由として、病院側の回答で多かったのは「救急や入院患者の緊急対応のため」(71.3%)や「手術や外来の診療時間の延長のため」(58.2%)、「患者(家族)への説明対応のため」(54.3%)でした。
一方で、医師側の回答を見ると、「診断書やカルテ等の書類作成のため」(57.1%)が最も多く、次いで「救急や入院患者の緊急対応のため」(57.0%)、「患者(家族)への説明対応のため」(51.8%)という結果でした。

看護師のほうも、病院側の回答では「救急や入院患者の救急対応のため」(73.6%)が最も多いのに対し、看護職員自身の回答でもっとも多かったのは「看護記録等の書類作成のため」(57.9%)でした。

つまり、病院側は本来業務による所定外労働が多いと考えているのに対し、医師や看護師は書類作成などの事務作業のほうが負担に感じているということでしょう。この「本来業務以外の部分」をメディカルクラークの活用や業務フローの見直し、ITの活用などでカバーすることが、働き方改革の第一歩ではないでしょうか。

参考
厚生労働省「平成30年版過労死等防止対策白書」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/18/index.html

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