院内暴力が起こったら

ここのところ、医療関係者が患者さんからの暴力の被害に遭うケースが相次いでいます。

厚生労働省は、2021年11月に「医療現場における暴力・ハラスメント対策について」と題した全12回にわたる動画を、YouTubeの公式チャンネルで公開しています。

今回は、その動画をもとに「暴行・傷害」対策について主なポイントをご紹介します。

 

トラブル発生時の対応のポイント①「現場保存」

 

暴行・傷害のトラブルが起こったときにはどのように対応すればいいのでしょうか。

まずは身の安全を確保すること、そして身体的被害を被った場合には迅速に受診することのほか、「現場保存」「証拠の収集・記録化」「警察通報の検討」が大事と指摘されています。

 

現場保存とは、迷惑行為が起こったときのそのままの状態を維持するということ。このときに、トラブルとなっている患者さんを別の部屋に誘導し対応することは、現場保存という意味でも役立ちます。

また、警察に通報した場合には、警察官が到着するまで現場をそのままにしておくのはもちろん、警察が実況見分などを行ったあとでも、現場を片付けて良いか確認してから片づけるように、とのアドバイスもありました。

 

トラブル発生時の対応のポイント②「証拠収集・記録化」

 

次に、事後対応や損害賠償請求などのためには、証拠を確保しておくことが大事です。

具体的には、人が怪我をしている場合には、「損傷部位の写真」「ヒアリング記録の録音」「受診に関する診断書・領収書」などを、医療器具や建物が壊された場合には「損壊部分の写真」「ヒアリング記録の録音」「修理に関する見積書、請求書、領収書」などを残しておきましょう。

また、写真をとるときには、保存した現場をそのまま撮影すること、現場全体がわかるように撮影すること、各写真撮影の方向などがわかるように現場図面も作成すること、被害の状況がわかるように撮影すること、位置関係が重要なときには計測も併せて行うこと――がポイントです。

さらに、被害を受けた医療者にヒアリングを行うときには、「何が起こったのか」という事実を確認することに主眼を置き、「あなたの対応にも問題があったのではないか」など、被害者にも問題があったことを疑うような発言は避けましょう。

そして、人の記憶は時間の経過とともに薄れていくものなので、なるべく早く事実を確認することも大事です。

 

トラブル発生時のポイント③「警察通報の検討」

 

被害を被ったときには当然警察に通報することになりますが、警察が出動したケースでも、医療機関も独自に撮影や計測を行うことが大切だそうです。

というのは、民事訴訟を行う場合、警察官が作成した資料は使用できるとは限りません。そのため、医療機関も独自に証拠を確保しておく必要があるのです。

 

暴行・傷害トラブルが起きたら

 

暴行・傷害トラブルが起きたとき、またはそうしたトラブルに発展しそうなときの現場での注意点として、次の5つが指摘されています。

 

  • 患者が激高している場合には、なるべく一人で対応しない
  • 過剰防衛に注意する
  • 刺激しない、挑発しない
  • 場所を変えて話すことも検討する
  • 必ず上司や施設の管理者に報告する

 

このうち、「場所を変える」については、場所が変わることで患者の気持ちが落ち着く可能性があるほか、他の患者さんの安全を確保することや、監視カメラのある部屋に誘導することで証拠を残しやすくなる、といった利点もあります。

そして、別室で対応するときには、花瓶などの武器になるものを置かないこと、何かあったときに逃げられるように出口を確保することも大事です。

 

そして、こうした迷惑行為に対しては、未然に防げればそれに越したことはありませんよね。

そのために、自院の事例だけではなく、他院の事例も集めて、マニュアルや院内研修にいかしましょう。

 

 

 

◎参考

厚生労働省 公式YouTubeチャンネル「医療現場における暴力・ハラスメント対策について」

https://www.youtube.com/watch?v=FrFJAz_kw9w

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