高血圧の新たなガイドライン――治療用アプリも推奨
高血圧診療の指針を示す『高血圧管理・治療ガイドライン2025』が2025年8月、発行されました。日本高血圧学会がまとめたもので、6年ぶりの改訂になります。
前回版にはなかった内容の一つとして、スマートフォンアプリの使用が推奨されました。さまざまな分野でアプリの活用が広がっているなか、治療用アプリもさまざま開発され、なかには薬事承認を取ったものも出てきています。
高血圧ガイドラインで治療用アプリはどんな位置づけに?
『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、治療の基本として①生活習慣の改善、②薬物治療、③共同意思決定の推進――の3つを挙げています。そして、生活習慣の改善の方法の一つとして、今回推奨されたのが、スマートフォンアプリをはじめとしたデジタル技術の活用です。
治療用アプリで血圧が下がるエビデンスがある
また、スマートフォンアプリは、クリニカルクエスチョン(CQ)にも取り上げられています。
「血圧管理を目的としたスマートフォンアプリによる介入は、一般成人において血圧を低下させるか?」というCQに対して、推奨のレベルは「2」、「スマートフォンアプリによる介入を提案する」としています。
というのは、メタ解析の結果、スマートフォンアプリを用いた介入によって、アプリ未使用群に比べて、介入6か月後の診察室収縮期血圧が-2.76mmHgと有意に低下しており、有効性が認められているからです。一方で、アプリの使用による有害事象の増加は見られていません。
ただ、健常者では3か月後の収縮期血圧は低下していたものの、6か月以降の効果は実証されず、また、高血圧患者では3か月後、6か月後の収縮期血圧は低下していたものの12か月以降の効果は実証されず、「長期間(6か月以降)の効果に関するエビデンスは不十分」であることが指摘されています。
どんな治療用アプリがいいのか?
治療用アプリと一言でいっても、アプリによって搭載されている機能は違います。スマートフォンアプリの機能別に検証された結果では、血圧記録機能や教育コンテンツ、ヘルスケアプロバイダー(循環器病予防療養指導士、高血圧専門医など)や他の利用者とのコミュニケーション機能に関しては、それらの機能があるかどうかで有意差は見られませんでした。
一方、上腕カフ型血圧計とのワイヤレス接続によって正確な血圧値を入手する機能のあるスマートフォンアプリでは、この機能がないアプリに比べて降圧効果が有意に大きいという結果が得られています。
正確な数値を自動で取り込めると、利用者の行動変容につながりやすいということでしょう。
診療報酬ではいくら?
2024年度の診療報酬改定では、治療用アプリをはじめとしたプログラム医療機器を用いた診療に対する診療報酬上の評価として「プログラム医療機器等指導管理料(月1回90点) 」「導入期加算(50点) 」が新設されています。
つまり、治療用アプリを用いて診療を行った場合、初月は「50点+90点」、2か月目以降は毎月90点の算定が可能ということです。
なお、高血圧治療において保険収載されている治療補助アプリ「CureApp HT」の場合、プログラム医療機器等指導管理料の算定は6か月が限度です。また、これらの管理料、加算のほか、特定保険医療材料費 として7010円も、6か月を限度として毎月算定することができます。
そのほか、薬事承認を受けている治療用アプリ
2025年8月末現在、高血圧治療補助アプリの「CureApp HT」のほかにも、以下のような治療用アプリが薬事承認をすでに取っています。
・ニコチン依存症治療アプリ「CureApp SC」
2020年8月薬事承認、2020年12月保険収載
・不眠障害用アプリ「サスメド Med CBT-I」
2023年2月薬事承認
・飲酒量低減治療補助アプリ「CureApp AUD」
2025年2月薬事承認、2025年9月保険収載
・小児期における注意欠如多動症(ADHD)の治療補助アプリ「エンデバーライド」
2025年2月薬事承認
治療用アプリは、患者さんの行動変容を後押しすることがいちばんのメリットです。すでに薬事承認を取っているアプリを見ると、高血圧、依存症、不眠症、ADHDと、患者さんの生活習慣や行動が、病気の治療や症状の改善に大きくかかわるものばかりです。
アプリの場合、利用者数が増えるとともに、リアルなデータがどんどん積み重なっていきます。ほかの分野でも開発中のアプリが多々ありますし、治療の選択肢の一つとしてさらに活用が広がっていくのではないでしょうか。
◎参考
・日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』
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