2021年度介護報酬改定のポイント

今年(2021年)は、介護報酬改定の年です。

改定率は「プラス0.70%」に決定され、前回の2018年度改定に引き続き、プラス改定となりました。このうち、0.05%は新型コロナウイルス感染症対策分にあてられ、全サービスの基本報酬が2021年9月末までの半年間、0.1%上乗せされます。

今回の介護報酬改定では、どのような変更が行われるのでしょうか。介護がどのような方向に向かうのかを知ることは、医療関係者にとっても大切です。ここでは、今回の目玉の一つ「科学的介護」と、テクノロジーの活用と人員配置の緩和についてご紹介します。

 

データの提出・活用を評価する「科学的介護」

 

今回の介護報酬改定で最大のポイントといわれるのが、「科学的介護」の推進です。

2016年度から通所・訪問リハビリテーションデータ収集システム「VISIT」が、2020年5月から高齢者の状態やケアの内容などのデータ収集システム「CHASE」が運用されていますが、2021年4月からはこれらを統合して、科学的介護情報システム「LIFE」(Long-term care Information system For Evidence)として運用することになりました。

そして、「LIFE」に入所者・利用者の基本的なデータを提供し、データベースの蓄積に協力するとともに、フィードバック機能を活用してPDCAサイクルを回してケアの質向上を図ることを評価する「科学的介護推進体制加算」が新設されます。

科学的介護推進体制加算は、ADL、栄養状態、口腔・嚥下状態、認知症の状況といった基本的な情報について提供した場合(Ⅰ)と、それらに加えて、詳細な既往歴や服薬情報、家族の情報なども提出した場合(Ⅱ)の2つの区分が設けられます。

 

これは、今回の介護報酬改定の柱の一つである「自立支援・重度化防止」の一環で行うもの。

「LIFE」へのデータ提出が進み、多くのデータが蓄積されるようになれば、どういう利用者・入居者の場合、どういうケア・サービスを行えば重度化を防止できるか、といったことがわかるようになります。また、データをもとに、他の施設に比べて質の高いケアを行えているのかどうかを比較することもできるようになります。

 

テクノロジーの活用と人員基準の緩和

 

今回の改定では、サービスの質を確保した上で人員基準・運営基準の緩和も行われます。

たとえば、特養(従来型)などでは、すべての入所者に見守りセンサーを導入し、夜勤職員全員がインカムなどのICTを使用し、職員の負担軽減や安全体制の確保などを行っていることを要件に、夜間の配置基準が緩和されます。

また、全サービス共通で、仕事と育児や介護との両立を支援するために、次のような見直しも行われます。

 

  • 職員が育児・介護休業法による育児の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、介護の短時間勤務制度等を利用する場合にも、週 30 時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。

 

  • 人員配置基準や報酬算定において「常勤」での配置が求められる職員が、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合に、同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算することで、人員配置基準を満たすことを認める。

 

2025年、2040年に向けて

 

介護報酬改定の背景にあるのは、2025年には団塊の世代のすべてが75歳以上の後期高齢者となり、さらに2040年には高齢人口がピークを迎えるとともに、介護ニーズの高い85歳以上人口が1,000万人を超えるという現実です。

 

医療でEBM(エビデンス・ベースド・メディスン)が謳われるように、介護においてもデータに基づく科学的介護を進めて、自立支援・重症化予防に取り組むことで、介護を必要とする人の増加を少しでも先送りすること、また、テクノロジーを活用することで質を担保しながら業務の効率化を図り、介護人材が不足しないようにすることは、喫緊の課題です。

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