2026年診療報酬改定、「診療所は適正化」?

 診療報酬改定に向けた議論が本格化しています。最近では、一般のニュースサイト「Yahoo!ニュース」などにも、診療報酬関連のニュースが取り上げられ、しかも、コメントも多くついています。
 たとえば、「物価高・賃上げへの対応焦点 診療報酬改定の議論本格化」と題した記事には180件以上のコメントがついていました。その中身を見ると、医療関係者の方からの切実な声が多い一方、一般と思われる方からも「インフレに見合うプラス改定は必須」「病院の倒産が増えていて心配」といった応援の声も寄せられていて、勇気をもらいます。

財務省は「診療所は適正化」

 
 2026年度の診療報酬改定に向けてはどんな議論が行われているのかというと、11月11日に開催された財政制度分科会では、社会保障が議題の一つとしてあがり、財務省から、診療報酬改定に向けた「改革の方向性(案)」が提示されました。
 まず、大きな方向性として、「経済・物価動向等への対応」は必要であり、「診療所への診療報酬は適正化 しつつ、高度急性期・急性期を中心とする病院への対応に重点化すべき」(※太字は著者)との考えが示されました。

 じつは、11月5日の財政制度分科会でも、財務省は同じ考えを示していました。それに対し、日本医師会の松本吉郎会長は翌日の記者会見で、「地域医療を守る診療所については、頻繁な入退場は望ましいことではなく、一定の利益率がないと、安定的に存在していくことは不可能」と強調。さらに、そもそも診療報酬は社会保障審議会で議論された「あるべき医療の姿」を念頭に中医協(診療側・支払側・公益委員)で検討すべきものであり、「財政的観点のみから財政審が個別の診療報酬まであげつらうことは越権行為」と、強く批判していました。
 
 11日の財政制度分科会では、こうした日本医師会からの苦言もふまえて、改めて「診療所への診療報酬は適正化」「病院への対応に重点化」という考えを示した形です。

なぜ、診療所は「適正化」が必要?

 
 11日の会合では、なぜ診療所への適正化が必要といえるのか、新しいデータも交えた理論武装が行われていました。
 たとえば、「医療機関の機能・種類別の経営状況」として、次のようなデータを紹介し、「メリハリのある診療報酬改定を実現するためには、医療機関の機能・種類に応じ、それぞれの経営状況や収益費用構造を勘案したきめ細やかな配分が不可欠」と、改革の方向性を示しています。つまり、高度急性期・急性期の病院ほど利益率が低く、無床診療所や歯科診療所は高い、そのことをもとに配分を、という考えです。


 
 また、「2024年度赤字診療所(医療法人立)の分析」という項目では、「2024年度の診療所の赤字の割合は33.8%だが、従来、赤字の割合は26.3%~48.7%で推移」していて、あまり変化はなく、「赤字であっても自己資本比率は高い傾向」にあり、「開設からの年数が長い診療所ほど、赤字の割合が高い」ことを指摘しています。そして、参考資料として、「法人登記が古い医療法人ほど経常利益率が低くなるのは、設置者である医師が内部留保を給与の形で取り崩しているから」と結論づけている研究(「東京都内の医療法人決算が示すコロナ禍公費バブル」2022年3月)を紹介しています。
 
 さらに、医師給与の国際比較まで持ち出して、「日本の開業医(診療所の院長)の給与水準は国内(全産業)の平均と比べて4.5倍、勤務医のそれは2.5倍であり、医師の給与水準は高い」「OECD諸国の医師給与は、国内(全産業)の平均と比較して、開業医(自営)が2.9倍、勤務医が2.1倍であり、日本における医師給与の相対的な水準は国際的に見ても高い」と主張しています。

患者数がますます重要に

 
 11月28日には、令和7年度(2025年度)の補正予算案が閣議決定され、「医療・介護等支援パッケージ(処遇改善・経営改善)」に約1.4兆円が計上されました。内訳は、「賃上げ・物価上昇に対する支援」に5,341億円、「医療分野における生産性向上に対する支援」に200億円、「病床数の適正化に対する支援」に3,490億円などです。

 前回の診療報酬改定でも、特定疾患療養管理料の見直しなどによって、大きな影響を受けた診療所は少なくないと思います。日本経済が長いデフレからインフレへと変わり、新たなステージに移行するなか、次回の改定では、経済・物価動向への対応は図られる一方、財務省の目の敵にされている診療所への風当たりは強そうです。

 医療収入は「診療単価×患者数」であり、公定価格の医療では診療単価のコントロールには限界があります(加算をとるなどはできますが)。患者数を減らさないこと、患者さんに選んでもらうことが大事です。そのためには、日々の診療の質はもちろん、受付から会計までのサービスの向上、ネット上のクチコミ対策も含めた広報なども欠かせません。
 また、これから開業を考えている場合は、やはり立地も大事です。メディカルクレアでは、「Medical Prime(メディカルプライム)」「Medical Tower(メディカルタワー)」という都市型医療モールをはじめ、開業支援を行っています。ぜひ、お気軽にご相談ください。
 

◎参考
財政制度分科会(令和7年11月11日開催)資料一覧
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20251111zaiseia.html
財務省 令和7年度補正予算
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2025/20251128.html

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